拝啓

智恵美さんは私には危険な人物と強く印象づけた。
まさか、連れてくるとは思ってもいなかった。
又来るだろうか?もし、きたらどうしよう。怖い。
その夜私は恐怖で一睡も出来なく震えていた。


陽が昇るのをカーテン越しに感じて、ベッドから起き出して身支度をして下に降りて行くと、宗ちゃんが出掛ける支度をしていたので声をかけた。

『何処に行くの?』

宗ちゃんは答えなかった。
その代わり夕方には帰ると言って出掛けてしまった。


私は軽く朝食を取ると母の遺影のある部屋に行き、母の遺影に向かって答える筈もない母に問い掛けた。


『ねぇ。ママ。ママにとって何が1番大切だったの?』


母の遺影は笑ったままだった。


私はジッとその母の笑顔を見つめていると玄関のインターフォンが鳴った。私は智恵美さんだったらどうしようと恐る恐るカメラを見たら、アテイ君と奥さんだった。

『はい。只今開けます。』
そう答えて玄関に行き、ドアを開けた。

アテイ君が口を開いた。

『彩に会いに来たのだけれど、会っても良いかな?』
花を抱えた奥さんも会釈した。

私は二人を迎え入れて母のお骨がある部屋に案内した。
二人は線香をあげて手を合わせた。
私はお茶を入れに台所に言った。

アテイ君と奥さんの声がしている。きっと母と話をしてくれているのだろう。
私は二人がこちらに来るまで声をかけないでいた。
1時間くらい経った頃二人がリビングに現れたので、私は二人にお茶を出した。


『母に会いに来てくれてありがとう御座いました。母も喜んでいると思います。
ちょっと待ってて下さい。』

私は自分の部屋に行き、母の撮った写真を持って二人の前に置いた。
二人は写真を手に取り、『懐かしい…。あっ!この写真あん時の写真だ。』二人は懐かしそうに写真を代わる代わる見て思い出話をしていた。
それを私は黙って聞いていた。

すると不意に私の目から涙が溢れた。驚いたアテイ君が言った。

『俺達何か気に障る事を言ったかな?』

私は激しく首を横に振り昨日の智恵美さんの一件の事を話した。
最初に怒り出したのは奥さんの方だった。

『あの人、昔から全然変わってないじゃない!
だから、私はあの子は昔から嫌いなのよ。彩と連んでなかったら付き合いたくない女だったもの!!』


アテイ君は宥めながら奥さんに言った。

『悪気は無いんだよ。』

すると奥さんが更に大きな声で怒りをアテイ君にぶつけた。

『本人が自覚してないから尚更質が悪いのよ!』

アテイ君は少しキツい口調で奥さんに言った。


『それでも、彩は智恵美も仲間の1人として大切にしてきたんだぞ。』

私はアテイ君に向かって問い掛けた。

『母は何故智恵美さんと連んでいられたんでしょうか?
私もサッパリ分かりません。知っていたら教えてください。
お願いします。でないと私は怖くてこんな気持ちのままで居たくないんです。』


アテイ君は小さな溜め息をついてから話はじめた。





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