拝啓

アテイ君がやっと口を動かした。

『それは本当?』


私は頷きながら答えた。

『はい。母に直接聞きました。
母は嬉し泣きしながら私に話しました。
やっと電話をする決心が出来たから、ずっと覚えていた、番号に電話をしたらやっと繋がれた…。って。』


奥さんが驚いて私に質問した。

『ずっと?忘れずに番号を覚えていたの?』

私はコクりと頷いて話を続けた。

『母はアテイ君のお母様に結婚した相手に電話をするのは止めて欲しいと言われた事が、ずっと頭から離れず、冬也さんに拒絶をされるのが怖くて、ずっと電話をするのを我慢していました。
それでも、番号をずっと、ずっと覚えていました。』


アテイ君は愕然としていた。


奥さんが小さく言った。
『彩らしい…。』


私達3人は黙ってしまった…。
何をどう言えばいいのか分からなかったからだと思う。


私はテーブルの上に散らばった写真の中から二人が写っている写真を二人に渡しながら静かに言った。

『この写真。持っていてくれませんか?
お二人も母にとって、とても大切な仲間だったのですから。
母は仲間の話をするとき何時も幸せそうに話して聞かせてくれました。
お二人に出会えて母はとても幸せだったと思います。
お願いです、受け取ってください。』


二人は頷くと写真を受け取り帰っていった。


私は玄関から二人の姿が見えなくなるまでずっと見ていた。
母は友人が少ない。
母はとても特質な人で人の感情を感じることが出来る人だった。


つまり、人が抱く感情をもろに自分にぶつかってくるのだ。
だから人をあまり寄せ付けなかった。
その母があの頃唯一側に居たいと慕っていた仲間達…。











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