拝啓
宗二は彩佳と初めて出会った場所に居た。
彩佳が居なくなってから毎日そこに立って、もしかしたら振り向いたら彩佳が居るような気がしたから。
でも、そこに彩佳は居なかった。
分かっている。もう彩佳にはどんなに願っても帰って来ることは無い。
ただ、その現実を受け入れるには時間がもっと必要なだけ。
彩佳が居なくなってから宗二は彩佳との思い出の場所を巡っていた。
バイク屋の前を通ると彩佳が乗っていたジョルノが売られていた。
宗二は店に入りジョルノを購入した。
そして、夜の街を彷徨った。
彩佳の言葉が頭の中で語りかける。
【夜の香りが好き…。】
宗二は彩佳の過去をあまり聞いていなかった。
彩佳も自ら話さなかった。
宗二が聞くと答える感じだった。
バイクは光の河の中に溶け込んでいった。