拝啓
智恵美は夜道をコンビニで買った袋をプラプラさせて歩いていた。
不意に涙が溢れた。智恵美は流れ落ちた涙を手で拭うと、懐かしい香りがした。
冬也が着けていた香水で彩佳も着けていた香水の香りだった。
智恵美は辺りを見回した。しかし、誰も居なかった。
『彩佳…。』智恵美は呟くとその場で立ち止まったまま彩佳との日々を思い出していた。
何時も心配そうに自分を見つめていた彩佳の瞳、本気で自分を心配してくれたたった一人の女友達。
その時フワリと風が智恵美の回りに吹いた時確かに彩佳の声が聞こえた。
『智恵美。大好きだよ。』
智恵美は暫くその場から動けなかった。
『私も大好きだよ。』
智恵美はそう言うとゆっくりと家路についた。
月明かりが静かに照らしていた。