拝啓
母の女友達

私は母の葬儀で見かけた女性を思い出した。
母の葬儀は淋しいものだった。
だから、その女性の事がとても印象に残っていた。
外見も金色に近い茶髪で何処か幸薄そうな感じだったのも印象にあったから。

葬儀の記帳をパラパラ捲ると、見覚えの無い、か細い字で名前と住所が書かれていた。
私はこの名前がその女性だと感じ、訪ねてみることにした。


宗ちゃんはずっと母の遺骨の前に座り、母を見つめていた。


その姿を見るとたまらない気持ちになったが、私はどうしても母の事を知りたい衝動の方が勝っている。


不意に宗ちゃんが口を開いた。
『嫁さん…。何処行った?』

私は宗ちゃんに声をかけた。
『宗ちゃん。ママはもう居ないよ。確りしてよ。』


父はゆっくり私の方に向いて言った。
『嫁さんは何時帰ってくる?』

私は出来るだけ優しく言った。
『宗ちゃん。ママはもうずっとソコに居るから。』


父は又遺骨の方に向いて呟いた。

『分かっているんだよ。自分でも嫁さんが、死んだこと。
でもな、認めたくないんだよ。
嫁さんは死なないと思っていたから。



私も母の遺影を見つめた。
そこには確かに母の笑顔の遺影だったけれど、私が知りたい母の顔では無かった。



私はその女性の住所を訪ねた。


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