勇者と魔王の弟子の物語

魔王の城


しばらく歩くと、他の家より少しだけ大きい家が見えた。



あそこか……


俺がトントン、とドアを軽く叩くと、中から軽い返事が帰ってきた。




「何用かね?」


ドアから出てきたのは、初老の男性だった。


優しそうな雰囲気のおじいちゃんだ。


「俺は勇者のトゥルークと申します。アウローラという少女に、分からないことがあったらここに行ったらいい、と言われて来たんですが。」



そう言うと、老人はああ…と納得し、俺を家に入れてくれた。


家の中は普通の民家と同じで、この町長は多分いい人なのだろう…と思った。


今の世の中、役人や長は民の税金で好き勝手やっている輩が大半だからだ。


テーブルを挟み、ソファに腰を下ろす。



「どうも、わしがアヴィニョンの町長のダリアスじゃ。
今回はアウローラ様の紹介だそうじゃが…

あの方は、美しかろう?」


ふぉふぉふぉ、とダリアスは陽気に笑う


「え、ええ…すごく…」


…アウローラ……“様”…?


そうじゃろそうじゃろ、と何故か嬉しそうに頷く。



「あの方はの……このアヴィニョンの誇りなんじゃ!!!

…間違っても、惚れるでないぞ…?」



「なぁっ!!?間違ってもないです!」


な!なにを言い出すんだ…!そんなことは絶対にありえない!!


「かっかっかっ!!!冗談じゃよ!!
…では、本題に入ろうかの?」



あ、そうだった…。


「俺は勇者です。魔王を倒す為にこの町を訪れたのですが……この町は魔王に支配されていると聞きましたが?」


ダリアスはふむ…とすっかり銀色になったヒゲをいじる。



「それは…本当じゃ。この町は魔王の弟子の支配下にある。」


「なっ!では、なぜ!!何かを要求されたりしているのですか!?」



「…まぁ、落ち着きなされ。ここには沢山の勇者志望の者が来るんじゃ。皆魔王を退治しにな。だが、全て返り討ちじゃよ。…それでも、魔王の弟子を倒すか?」





…それほど、魔王は強い、ということか…
















「…望むところです!」





「…望むところ…のう……」


ふぅ、とダリアスは息を吐くと立ち上がり、側のタンスから紙をだしてきた。


「ここが魔王の城じゃ。やれるもんなら…倒してこいっ!!」















……なんか、勇者ってこんな扱いだったっけ?

















俺は地図を握りしめ、町長の家を出た。








< 11 / 15 >

この作品をシェア

pagetop