勇者と魔王の弟子の物語


魔王の城、といってもそこまで入り組んだ場所にあるわけではなかった。


アヴィニョンから北に向かって森を突っ切るとすぐ…と書いてある。



…というか、案内板がある。







なんなんだ?魔王の城って…





色々と疑問を抱きつつ森の奥へと進む。



サク、サク、サク…


自分の足が踏む草の音と風の音しかしない。



……静かだ。



あれ?魔王の城ってもっとこう…ねぇ?



魔物がうじゃうじゃ〜とか、いるもんだよね?




…ますます不思議だ。




しばらく案内板に従って一本道を進むと、辺りが霧がかってきた。



霧で辺りが白くなり、視界が悪くなってきた。



くそっ、これじゃ何も見えない…





ゴンッ!!!





「ッツ……!!!!」


乾いた音が響いた。




俺の頭が硬い、とてつもなく硬い何かにぶつかった。


「いってぇぇ〜…なんだ?」


見上げてもそこには何もない。



だが、手を前に出してみたら冷たい石質の感触がある。



「もしかして…」




俺は素早く魔力を練り上げる。



「……デスペル!!!」



目の前に魔方陣が浮かび上がる。



すると視界が歪み霧が晴れ、黒々とした巨大な城が現れた。


よし、ビンゴ!!


デスペルは、あらゆる異常状態を無効にする魔法だ。


それにしても、でかいな…


だが、色が悪趣味なことを除けば普通の城となんら変わりはなかった。



とりあえず、入ってみよう。


大きく一見重たそうな門は、トンッと軽く押しただけでいとも簡単に開いた。


中に進むと左右に階段があり、そこにはまた1つ扉があった。


多分、あれが普通の城でいう謁見の間というものだろう。


…本当に魔王なんているのか?


あまりにも静かすぎて、そんなことばかり考えてしまう。


やっぱりもう誰かに倒されてるんじゃないだろうか。


とりあえず警戒をしつつ、階段を登る。



そして、扉を開く。



開いた瞬間、部屋の中央から魔方陣の光が現れ、同時に霧のようなもので視界が覆われた。








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