勇者と魔王の弟子の物語
通路を抜けると、謁見の間に出ることができた。
でも、そこには……
黄色いドレスに赤いシミを沢山つけて倒れている人を揺する母さまと
母さまに揺すられている……
「……とう、さま……?」
屈強で倒れたことのない父さまが
厳しくて怒ると怖いけど、とっても優しい父さまが
母さまの前で血まみれになって……
「…と、父さま…!父さまぁ!!!」
僕は、父さまに駆け寄った。
僕の叫び声に母さまが気づいたらしい。
「…!アル!!!来ちゃダメよ!逃げなさい!!!」
母さまの言葉も聞かず、父さまに駆け寄った。
「父さまっ!目を開けて⁉︎父さま!!」
血まみれの父さまは、ピクリとも動かない。
「そんな…父さまぁ…!」
僕は涙と鼻水でドロドロになりながら、父さまにすがりついた。
「…おやおや、泣けるねぇ、王子さま」
僕が顔をあげると、そこには見慣れた金の短髪。
まだ小さい僕には首をかなりあげないと顔が見えないほどの大きな体。
いかつい顔には、いつもの優しいものではなく、冷めたような黒い瞳。
…そして手には、血に染まった長剣。
「しょう、ぐん…?」
将軍は立ったままこちらをずっと見ている。
「フェイト将軍!何やってるの!早く父さまを助けてよ‼︎‼︎」
僕の叫びに将軍は一瞬キョトンとした顔をすると、大声で笑いだした。
「ク、クハハハハハハ!!こりゃあ面白い。」
「ど…どうしたのフェイト将軍!早く…父さまをっ!」
将軍の笑い声はピタリと止まった。
そして将軍は僕に近づいてきた。
「おい、いいか王子さま。もうな、王様は死んでんだよ。
…俺が殺したからな‼︎‼︎」
……嘘だ。
…嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ!!!
あんなに強い父さまが死ぬわけない。
死ぬわけないんだ。
「…そう泣くなって、王子さま。
…すぐ王様んとこに連れて行ってやるから。な?」
なんで、あんなに優しかったフェイト将軍が…僕のおじさんが…
「じゃあな、哀れな王子」
フェイト将軍は剣をふりあげた。
血が飛び散る。
床に赤い液体が広がる。
僕も死んじゃうのかな…