勇者と魔王の弟子の物語
通路を抜けると、さっき入ってきた城の裏に出た。
「ロイド!離せ!!どうして!どうして母さまを見殺しにしたんだ!」
ロイドは立ち止まり僕を下ろすと、バシッと乾いた響きがこだました。
ロイドが、僕を叩いた。
よく叱られて殴られることはあったけど
そんなものではなくて
「…な、何するんだ!」
「落ち着いてください。今は悲しみに浸っている場合ではあありません。」
「だってっ!」
僕はロイドを見上げた。
「……ロイドっ!う、腕っ⁉︎」
ロイドの左腕は炭のように真っ黒だった
ずっと右腕に抱えられていたし、通路は暗くて今までよくわからなかった。
さっきのフェイトの火属性魔法が当たったんだ………‼︎‼︎
「このくらいなら、問題ありません。それより、フェイトの部下に見つかる前に、早く…!」
「で、でも…」
「いいから早く!」
ロイドは僕の手を左手で引っ張って先に進む。
炭のような左手が夜の闇に溶け込む。
僕らは丸腰だ。
敵に見つからないよう、森へ入る。
笑いそうな足を必死に動かす。
息が切れ、喉がヒューヒューと鳴る。
もし見つかったら……
「おいっ!居たぞ!王子だ!!」
…心臓が、ドクンと鳴る。
まるで耳の側にあるみたいに、大きく、大きく波打つ。
怖い。
怖い。怖い怖い怖い!
走って行くうちに、崖の方に出る。
…誰だよ、お城を崖の上に作ったやつ…
「へへ…もう逃げられねぇぞ…!手柄は俺のもんだ!!」
ジリジリと、フェイトの部下たちが寄ってくる。
僕は、ロイドの後ろに隠れる。
僕も、殺されるんだ。
怖い…
「いいですか、アルさま。」
ロイド…
「強く、生きてください。」
ロイドは僕を、押した。
「なっ⁉︎ロイド‼︎‼︎⁇」
僕の体は谷底へどんどん落ちていく。
「こんの小僧!何してくれてんだ!」
フェイトの部下たちが、ロイドの背中を剣で突き刺しているのが見えた。
…そこで僕は意識を手放した。
「…ゴフッ…!」
「おい小僧、あんなチビ連れてなけりゃあもう少し生きられたのになぁ?」
突き立てられた剣は、容赦なくロイドの命を削っていく。
「大体、あんな高さから落としても助かるわけねぇだろ?
おめえが殺したようなもんじゃねぇか!!!」
ギャハハハハ!と汚い笑い声を響かせる
ふっ、とロイドは笑った。
「お前らごときに、あの方は殺せん。」
「あ”?
うるせえな、蝿が。」
フェイトの部下は、ロイドに刺さっていた剣を思いっきり引き抜いた。
“スロウ”
ロイドが呟いた呪文は、誰も聞き取ることはなかった。
僕の体は、なんだか宙に浮いたような気がした。
コツ…コツ…コツ
谷底の冷たい岩に、靴音が響く。
「…あら?人が倒れてるわ。
昨日の襲撃で死んだ兵士かしら…
こども?」