みんなの冷蔵庫(仮)2
あんまりにも弱々しいから、腕を伸ばし、傘の中に彼を入れて。

何かに操られるように背伸びをし、反対の手を伸ばしてそっと頬に触れた。

すごくすごく冷たくて、もしかして人間じゃないのかも、と一瞬思った。


それはまるで、夏の暑さや海の開放感が気持ちを大胆にさせ、出会ったばかりの異性に突然欲情するように。

しとしと降る雨と、濡れてもつれたベージュの髪は、起爆剤となって私の胸を震わせた。


「俺を拾ってくれ……」


かすれてよく聞き取れない低い声。

震えていて――
泣いているのかと思った。


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