みんなの冷蔵庫(仮)2
「そこの缶に入ってる」


トキちゃんがそう言うと、金髪少年はすばやく動き、指差された棚の上の筒状の缶を手にした。

その時、佐田さんには背中を向ける形になった。

なのに佐田さんはただその姿を見ているだけ。

どうして?
このままだと睡眠薬を飲まされてしまうのに。
どうして反撃しないんだろう……


「ちよみ行こ」


胸にどんどん広がる、言い表せない感情。

そんな私に気付いていないかのように、トキちゃんは肩に置いた腕を押し、寝室へと誘導する。

そのまま連れられて歩きながら肩越しに振り返ると、少年が缶から錠剤の束を取り出していた。

佐田さんはそれでも黙って無表情で立っている。



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