みんなの冷蔵庫(仮)2
「――ちゃん、きちゃん」


相変わらずの暗闇

押し入れの中の、古びて臭いぬいぐるみが喋り出す。


「トキちゃん!」


肩を揺さぶられた振動で、ゆっくり瞼が開いてゆく。


ていうか瞼……閉じてたんだ……。

眩しい程でもない、間接照明の橙色の光が、開きかけたそこから染み渡る。


「トキちゃん、またうなされてたよ」


不安と心配を混ぜ合わせた瞳で見下ろしてくる女。

……ちよみ。

名前をすぐに思い出せなかった。

疲れてるんだろうか。


< 254 / 354 >

この作品をシェア

pagetop