みんなの冷蔵庫(仮)2
「死ぬだなんて言わないで」


ちよみは消え入りそうな声でそう漏らし、涙ぐんだ。


「やっちんは……」


シオが俺を見下ろす。

眉間と鼻の頭に皺を寄せ、口を真一文字に結んで。

今まで何度も見た事のある、シオが過去を思い出す時に見せる、苦い顔。


「やっちんは気にしすぎなんだよ。俺みたいに、怒りだけで生きれば楽なのに」


シオはそう言って背を向けた。

その薄い背中と、握られた二つの拳が、小刻みに震えている事に気付き、俺は胸の奧がズキンと痛んだ。

全然、楽そうに見えない。

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