みんなの冷蔵庫(仮)2
今思うと、あの時ケンちゃんはもう死んでいたのかもしれない。

袋の食料が無くなったら、ひもじくなった俺は生の米を食べたり、最後には埃も食べて水道水で空腹を満たした。

ケンちゃんが段々臭くなったから、押し入れに入れた。

ドアが乱暴にノックされる度、何だか不安になり、息を殺して気配を消した。


そしてある日大人がドアをこじ開けて沢山入って来た。

俺に名前や年齢を聞いたけど、答える事ができなかった。

俺は大人達を押し入れに誘導し、指差して「ケンちゃん」と言った。

俺が唯一知る名前だったから。

大人達は異臭に口元を押さえながら、目に涙を浮かべていた。

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