みんなの冷蔵庫(仮)2
「だって……」


床に座り込んだまま京極を見上げる。

良かった。綺麗なまま、傷ひとつなく帰ってきたことが、嬉しくてならない。

シグマがそっと横に来て、自分もしゃがみこんだ。


「中、どんなだった?」


シグマは京極を見上げ、好奇心いっぱいの表情で問いかける。


「どうも何も、入ったと思ったらすぐに出てきてしまったから……」


京極は肩をすくめて見せた。
瞳には僅かに焦りの色が見える。

ごめん、私が臆病だから……。

その言葉は言わずに飲み込んだ。
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