みんなの冷蔵庫(仮)2
「さぁ、あなたの力を見せて下さい」


ナメクジは囁くようにそう言うと、小鳥の羽ばたきのように慌しく睫毛をしばたかせた。

そして手が肘から徐々に上がっていき、私の肩に触れる。

両肩に乗せられた手に、力が入っていく。

痛みはないけど、ぞわぞわする感覚。

寒気とかじゃなくて……変に気持ちよくて――それが、変。

柔らかい羽で撫でられたような、くすぐったさっていうか。


向かい合ったナメクジとの距離が近く、私はナメクジの整った顔をじっと見ることしかできない。

けれど体を伝う感触で、ナメクジの手が移動しているのがわかる。

ナメクジの硬い手は、最初はぎこちなく私の肩から肘までを上下に移動する。

そしてそれは段々滑らかになり、指先が踊るようにスムーズに動き出す。
< 352 / 354 >

この作品をシェア

pagetop