【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく
「口答えは許しません」
極力短くされた返答は、頭が真っ白になるほどに淡白だった。
「お母様、」
「貴女の母としての役目はもう終わりました。これからは先代として『未琴』とお呼びなさい。分かりましたか」
深く冷たい何かが露李の心に滑り落ちる。
もうお母様はいない。
「…………はい、未琴様」
一文字ごとに絞り出すように答えると、未琴は満足げに目を細めた。
「それでは、貴女に風花姫としての使命を託したいと思います」
人形のように未琴を見つめる露李。
「こちらへ寄りなさい」
わずかな衣擦れの音。
「【記憶の継続、我が名において始めよう。永久の鎖をここに巻こう】」
未琴の身体が青く発光した。
──あぁ、お母様は青色だった。
切なく思う露李の額に未琴が人差し指と中指をつける。
「あぁっ!!」
その瞬間、頭に激痛が走った。自分のものではない記憶が流れ込んでくる。
痛い、苦しい、助けて。
どの言葉も叶うはずなく、露李はただ畳に伏す。
「それしきのことで苦しみ悶えるなど。風花姫として恥を知りなさい。さあ、使命を受け入れるのです」
霞む視界に見えたのは見慣れた、見慣れたと思っていた、かつての母の姿だけ。
露李の意識が途切れた。