【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく

「露李ー。いるんだろ、出てこーい」

文献を探すも古い時代の文字で読めそうにない。

段々と疲れてきたところに結の声が聞こえた。


「あ、結先輩」



扉の方へ少し歩くと守護者たちの姿が見えた。

「『あ』だとぉ?お前ー、急に居なくなってどれだけ心配したか分かってんのかー?」


露李が書棚の列から姿を見せるなり髪をグシャグシャにされる。


「何するんですかー!」


力任せに撫でられたので床に座りこんだ姿勢のまま睨む。

「ほら、立て」


疾風が手を差し出した。

服が汚れるからということらしい。

素直にその手を取って立ち上がる。


「髪に埃付いてるぞ」


そう言って露李に笑いかけた。

瞬間、心臓が大きく跳ねた。

妙に優しい笑顔。


「えっ、どっどこ!?」


狼狽えてわたわたと手で髪をとかしながら深呼吸を繰り返す。


「大丈夫、今とれたよ」


文月がそう言うのを聞いて手を止めた。

何で私。

自問自答──したいところだが、一つ心惹かれるものがあった。


「静くん、その本どうしたの?」


あの金色の本だ。


「居間に置きっぱなしにしてあったの、持って来ちゃったんです」


困ったように静が笑う。


「あの、これが何か…」


「えっと、んー…ごめんちょっとそれ貸してくれる?」


やたらと気にかかるのだ。
不自然なほどに頭を支配する。


静から本を受け取り、辺りを見回す。


「…呼ばれてる」



そう呟いてから感じるままに足を動かした。


「おい!」




理津の声を無視できるほど、囚われていた。

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