【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく
「貴様の分際で名を呼ぶな。雑魚が」
「何様ですか、お前は」
水無月の口が笑みの形につり上がった。
「露李に術をかけたのは貴様か」
もはや問いに答える気もなく、未琴を睨み付ける。
今までのちゃん付けが、自分を覚えていない露李への配慮だったということも見てとれた。
「露李と約束していたのです」
「約束だと?」
水無月は顔をしかめて返した。
「今度また雹雷鬼を出現させたら、露李を眠らせるという約束です」
「貴様───!!」
「あんなものは、神影の恥ですからね」
ギラリと金色の閃光が走る。
「下衆がぁぁぁ!!」
水無月の咆哮が周りを圧倒する。
未琴が光を出現させるのと、水無月が未琴に斬りかかるのは同時だった。
右手に刀、左手には断頭台。
「氷紀、お前まで」
未琴の光の盾がバチバチと音を立てる。
「愚かな」
「鬼などと戯言を!神影を、何だと思っているのですか!」
ヒステリックに叫ぶ未琴を嘲笑う。
「神影の名の意味も知らないのか。この炎雪鬼で斬るのも反吐が出る」
鬼だけが出せる刀だ、と憎悪の眼差しで未琴を見つめる。
「このっ……」
青の結界が、弾けた。
「滑稽だ」
水無月が炎雪鬼を振り下ろす────
「結!!何をしているのですか!!」
未琴の金切り声が響いた。
「──邪魔だよ、風雅」
結が自らの腕に造り出した風の刃と水無月の炎雪鬼が膠着状態に陥っている。
「未琴、様………」
結の明るいはずの翡翠が明滅している。
明から、暗へ。
表情は苦悶に歪み、汗が滴る。
「また、貴方は……」
「道具は道具らしく務めを果たしなさい。己の死を以てしても」
結が歯を食い縛る。
修行と称した二年間。
自我を乗っ取られる毎日が頭に過る。
二年間。あの二年間が。
未琴の操り人形になるためだけの二年間が。
「…貴様、堕ちる所まで堕ちたと思っていたが─甘かった」
結の視界の端に、守るべき風花姫が映った。
あれは、誰だ。
あれは、あれは。
『守りたいんです!』
『結先輩!』
『待って下さいよー!』
「露李…!!」
ガキィン、と金属音が鳴る。