【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく

「結っ、結!!」


未琴が叫ぶ。

修行の末、結の体は彼女の声に反応するようになっていた。


「邪魔するなら、斬るよ。風雅、今ここでこいつの為に死ぬとか許さない」


「確かに死に時ではねーかもな」


結はまた露李を一瞥してにかっと笑った。

いつもの結の笑みだった。

水無月は意外そうに目を少し見開いた。


「結、お前は裏切る気なのですか」


厳しい声が結の背中に向けられる。

振り向くと、未琴が冷たい目で結を睨みつけている。


「あんたを裏切ったつもりはねーよ」


敬語さえ使わなくなった元操り人形をさらに睨む。


「俺が守るべきものはあんたじゃねー。あんたの道具じゃなくなっただけだ」


「結、貴方たちが私に受けた恩を忘れたとでも言うのですか」


ぐ、と言葉に詰まった。

確かに今まで村での事件を納めてくれたのは未琴だ。

主に五人の容姿や力がバレてしまったときの後処理。

それが無ければ今の自分達はいなかったかもしれない。


「…それでも、あんたの言いなりにはならない。俺は俺の意志で動く」


「風雅、仲間割れか?安いもんだな、妖怪」


もう挑発になど乗らない。


「この結様がそんっな卑怯なことすると思ってんのかー?」


水無月がぴくりと眉を動かす。  


「妖怪風情が何を」

「俺は俺の意志で動くっつってんだ。てめーに未琴様殺されて露李が目覚めるより、未琴様が露李の術解く方がましってもんだろ!」


まだ死なせるわけにはいかないんだ。

まだ。

露李にとってはまだ、未琴様は母親のままなんだ。

未琴様が否定しようとも、露李が目を背けようとも。

また笑って欲しいから。

自分たちが見た、あの明るい笑顔で。

それに。


「まだ、言えてねー…」


ごめん。単なる我が儘だったって。

同じ宿命を背負った露李が分からないはずないのに。


「俺はこの下衆を殺してから露李を連れて行くつもりだ」


「おーそうかよ」


結がにやりと笑った瞬間。


「結っ!!」


「結先輩!!」


四人分の叫び声が聞こえた。


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