【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく
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早朝。結は細く目蓋を押し上げた。

昨夜はあのまま眠ってしまったらしい。

今日が土曜日で良かったと安堵のため息を漏らす。


「おーい!!お前ら起きろー!!」


海松がかけてくれたのだろうか、布団を引き剥がす。


「寒!止めろよ結!」


疾風が呻く。寒がりには拷問だ。


「せ・ん・ぱ・い!!」


「…止めてください、先輩」


「はっはっは、それでい──」


最後まで言い切る前に、言葉を切った。

えもいわれぬ寒気に襲われたからだ。


「ねぇ結。すっごい寒いんだけど。誰?布団剥いだの。ねぇ」


「文月、いや、あのこれは」


顔面蒼白の結に対し、文月は笑顔だ。

ただし、目が全く笑っていない。

文月は寝起きが悪い。

それは守護者たちは承知していたはずだったのだが。


「ガチャガチャうるせぇな…」


理津も咄嗟に悪態をついたが、瞬時に状況を理解して押し黙る。

静は起きたことさえ知らせない寡黙さである。


「結って面白いよね、何で下がってるの?」


じりじりと後退する結を面白そうに眺める文月。


「あ、あー…あああぁ!!」


「何?うるさく喚いて」


「水無月はどこへ行ったんだろうなー!」


自分で言っておいて、ん?と固まる。


「いませんね」


「露李の部屋じゃないんすか?」


少し拗ねたように疾風が言った。

「やっぱそうか?」

露李に危害を加えることは無いだろうが、何か嫌だ。

五人揃って同じ表情を浮かべながら立ち上がる。

勿論行き先は露李の部屋だ。




廊下を歩いて露李の部屋へ到着した。

襖が開けっ放しになっている。


「水無月?」


案の定、露李の横にいた。

優しい、穏やかな表情で露李の髪を撫でている。

神聖な空気が漂っているのはその慈しむような視線のせいだろうか。

それとも、鬼の力なのか。

「世話に、なった」

どこか覚悟したような響きだ。

水無月がこちらに振り返り、にっこり笑う。


「悪かったよ。君たちを試してた─でも、これで安心できる。安心して君たちに露李を任せられる」


「何を、」


疾風がそう言おうとするが、笑顔に気圧される。


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