【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく
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露李が居なくなってから、二週間が経った。

守護者たちは実家には帰らず、まだ神影の家で暮らしていた。

花霞の容態も見なければいけないし、恨みに染まった妖の退治をするにはここに留まるのが一番だ。

そう理由をつけていたが、本心は違う。


いつ露李が帰ってくるか分からない。


その期待を捨てきれなかったのだ。


寒空の下。

守護者たちはますます無口になっていく。


風雅家の頭領としての仕事をこなすため一度家に顔を出した結は、小さくため息をついた。

息が白く染まる。


『結様、少しくらいお帰りになっては?母君が心配なさっていますよ』


家老の声が頭の中に響いた。

心配など、いらない。

小さい頃からそうだった。

結達の代で、守護者は千年目を迎える。

守護者が始まって千年、などというのではなく、その歴史を千年ごとに区切ったときの千年目ということだ。

千年目の守護者は他にない力を発揮するという。

だが。


確かに他の者にはない強さが結たちにはある。

しかしそんなものではないはずだ。


「今、現れてくれたらなー…」


そんな弱気なことを考えてしまう。

自分達が思った以上に傷ついていたのだと思い知った。


露李を助けたいという思いが、露李本人に真っ向から拒否されたのだ。

一緒にはいられない、そう言われてしまった。

自分達は道具。花霞に翻弄されるしかない。

その事実を突きつけられた気がした。

結は悔いていた。

どちらが大事だと聞かれたとき、黙ることしかできなかった。

否定できないのも確か。

だがしかし露李を必要としているのも確か。

あのとき露李だと告げていれば。


──どうして俺たちはいつも。一歩前で立ち止まる?


考えても仕方がないと、頭を振る。


「どうしろって言うんだよ…!」


消えそうな西陽がぼんやりと辺りを照らす。

後輩たちの前ではけして見せようとしなかった苦しげな表情。

ガンッと木を殴る。

見知った小さな動物の妖が恨めしげに結を見つめた。


「あー、悪い」


はは、と乾いた笑みをこぼす。

何が守護者だ。何が千年目だ。

結局俺は。


「何一つ守れてねーじゃねぇか」


行き場のない怒りが爆発しそうになる。

空気が震えた。


「結?」
 

やや警戒した文月の声。

結はギクリと肩を揺らした。




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