【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく
***


「露李、露李っ」


暗闇の中、誰かの声が露李を呼ぶ。


「誰…美喜?」


露李はゆっくりと目を開けた。

もうとっくに日は落ち、木々のざわめく音しか聞こえない。


「露李起きなさい!」


あまりの慌てようにすっかり目が覚めた。


「どうしたの?」


こんな風に美喜が慌てるのも、部屋にやって来るのも珍しい。

何事かと急いで身を起こした。


「有明様が、神影神社を襲撃するって…!」


頭の芯が寒くなった。


「今、水無月が止めてるとこ。何でか分からないけど、やっぱり花霞を取りに行くって!」


「何で…!有明様は!?」


「たぶんあの方の部屋よ、まだ行ってないはず」


そう聞くや否や、露李は走り出した。


どうして。有明様。

約束したじゃない。

私が来れば、神社を襲撃したりしないって。

どうして。


「有明様!!」


ターンと音を立てて襖を開ける。

そこには驚いてこちらを見る従者たちと、顔色一つ変えない有明がいた。


「神社を襲撃するって…どうしてですか!?」

「露李姫。我々は話中故、申し訳ないがお部屋にお戻りを」


秋雨が静かに言った。


「私に関係ない話じゃないでしょ!?」


そう言いながら視線は有明に向いたままだ。


「露李姫。戻れ」


有明の瞳は冷たい。


「嫌です!約束したじゃないですか!」


叫んだ露李を嘲るように──笑う。


「約束、とな。そのような口約束なんざ意味を持たない」


心底楽しそうに、面白いものを見るような目で。


「これが最後だ露李。戻れ」


「私は…!」


「終わりだ、露李。あの雑魚どもも始末してきてやろうぞ。守護者をな」




露李の瞳が、金色に染まった。



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