【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく

次に、右側にいたスラリとした男性が露李に声をかけた。


「姫様。理津の叔父、秀水と申します」


紳士的で優しそうな印象。

銀縁眼鏡の奥の、紫の瞳が穏やかだ。

水鳥特有の灰色がかった茶髪は長く伸ばされ、上品に横で一つに束ねられている。


ここまで来ると緊張も解け、いつもの作法を取り戻した。


「神影家から参りました露李と申します。千代目風花姫を襲名致しました」


「ほう、なかなかな美人だな。さすが未琴の娘だ」


「父上!」


「ははっ、久しぶりじゃないか文月。風花姫様、文月の父、忍と申します」


口を挟んだのは金茶の髪に浅葱の瞳の男性。

どことなく体育会系な感じの人だ。

着物の下には立派な筋肉が隠れているだろう。

忍を押し退けるようにしてもう一人の男性が前に出た。

藍の瞳を持っているため疾風の肉親だとは分かるが。


──やっぱり、髪が違う。

疾風の髪は、不思議な色をしている。

光の加減なのかは分からないが、透き通っていて、碧にも透明にも見える、美しい色だ。

しかし今、目の前にいる彼の髪は赤い。

ヤンキーのような奇抜な色ではなく、落ち着いた赤薔薇のような濃い色だ。


「初めてまして、姫様。疾風の兄、景真です」


かげま、と名乗った彼は深々と露李に礼をした。


「お兄様ですか。どうぞよろしくお願い致します」 


露李も軽く微笑んで返す。

似てるけど、髪色が違うと随分印象が変わるもんなんだな。
疾風はぶっきらぼうな感じだが、景真はどちらかというと軽そうだ。


「忍、いつ風花姫が貴方に発言を許しましたか」


険のある声色で秀水が言った。


「固ぇなあ秀水はー」


「貴方という人は…。申し訳ありません、姫様」


「いえ。大丈夫です」


寧ろ気楽にしてくれた方が露李には有り難かった。


「ねぇ、姫様。お隣にいる方は…」


詩衣がおずおずと尋ねる。


露李が返答に困っていると、結がちょんちょんと肩をつついた。

少し目を合わせ、察する。

不本意ではあったが、


「──皆さんの発言を許可します」


それを受け、結が前に出る。


「露李の式神だよ、母上」


「まあ、そうなの!」


「意思もあるし、実体もある。小さい頃から傍にいたからより強い守護ができるんだ」


「やっぱり千年目の姫様はすごいのね。…姫様、どうぞ中へ」


詩衣の言葉を合図に、一行は足を踏み入れた。


< 221 / 636 >

この作品をシェア

pagetop