【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく
「母──神影 未琴は、亡くなりました」
空気が張りつめる。
部屋は十分に温められていたはずなのに、背筋が冷えた。
「どうして」
秀水が呟く。
ぞっとするほど冷たい何かが彼から溢れ出ている。
「なぜ、未琴が死ぬんでしょう」
「秀水、落ち着きなさい」
詩衣の言葉をものともせず、露李を見つめ続ける。
分かっていたことなはずなのに、秀水にはまた一族たちのそれとは違う感情があるように思えた。
「未琴が死ぬはずない。おかしいと思っていました。まるで便りがなくなって、未琴不在の帰還なんて。ええ、神社のお守りを買って出る可能性も重々承知ですが、なぜ、風花姫が帰還するんです?」
淡々と告げられる疑問は的を射ていた。
控えている守護者たちに焦りが走る。
矢継ぎ早な質問は誰であろうと混乱させる。
そして─秀水が敢えてそのような尋ね方をしていることを彼等は知っていた。
尋問を得意としていることも。
─でも。
何でだ──?
理津には叔父が感情的になるような男にも思えなかった。
だからこそ予想外の出来事だったのだ。
守護者である手前、死は何よりも身近なもの。
頭領でなくとも当主である秀水にだって分かっているはずだ。
動揺は誰でもするし、悲しむだろう。
しかし秀水は──。
全員が顔を見はしないものの、露李の様子を伺う。
「母は、花霞を狙う者による襲撃で、命を落としました」
当主たちが各々、悲痛な顔をする。