【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく
「露李先輩の部屋、この廊下の突き当たりに準備して下さってるみたいですが…」
ゆらゆらと萌黄の気を纏いつつ静が困ったように首を傾げた。
葵と言霊を交わしているのだろう。
「えっと…」
何だかいつもと違って萌黄の色が薄い気がするな、と思いながらも露李は歩みを進める。
「『私と詩衣に準備させてって頼んだのに、まだおもてなしが完璧じゃないの!静どうにかしといて!』だそうですが」
「何それ、葵さん相変わらず凄い無茶ぶりだねー。相手は風花姫なのに」
とは言うものの、勿論のことだが、結以外は自分の家ではない。
露李と水無月は当然のこと、文月たちも好き勝手にはできない。
よって、結に視線が集まる。
「何だぁ?」
「結先輩ー、どうにかして下さいよ。ご自分のお家じゃないですか」
露李に言われ、少し考える仕草をして─不自然に固まる。
「いやっ、俺の部屋は行かせないぞ!?」
「私、何も言ってませんが」
「何だ貴様、反応がおかしかったぞ」
露李と水無月が突っ込むのに対し、文月と理津はニマニマと怪しげな表情をしている。
「そっか。結の部屋が一番良いよね。結の部屋に行こう」
「待て文月!」
焦る結に理津は追い討ちをかける。
「なーんでそんな慌ててんだよ?エロ本でも隠し持ってんじゃねぇの?」
「ちげーよ!」
「エ、エロ…とか、結先輩破廉恥ですよ、露李先輩の清らかさが減りますっ」
「…静の清らかさも減りそうだ」
「だっから、ちげーって言ってんだろ!」
頬を真っ赤に染めて反論。
「結先輩…」
「んだよ露李。その目は」
「いえ?」
「余計気になるわ!」
むすっと膨れてしまったが、毎度のごとくそれは可愛いだけだ。
「他の部屋は」
「貴様、露李に居心地の悪い思いをさせる気か?」
「そうだよ結ー」
「っああもうっ、分かったよ!こっちだ!」
ずんずんと結が進んでいく中。
「静くん、何だかいつもより気の色が薄いかなって思ったんだけど。体調悪い?」
「露李、露李っ。俺すごくお腹痛い。ほら、気が見えないよ」
「氷紀は仕舞ってるだけでしょ」
露李に一蹴され、目に見えてショボくれる。
「で、静くん」
「あー…ここ、守護家の一族ほとんどが集まってて、力が使いにくいんです。思考が多すぎて」
そんなもんなのか、と相槌を打つ。
「…露李、何か勘違いしてないか。この環境で力が使えるって、相当凄いことだぞ」
疾風が呆れたように露李を横目で見る。