【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく

微妙な気持ちでむくれつつ、結は文机の前に座る。

幻想的な世界の中で物騒な話をするのは躊躇われたが、自ら口火を切った。


「秀水さんのはともかく。やっぱりこの家は変わんねーな」


やな空気がムンムンする、と頬杖をつく。


「やな空気、ですか?」


特に感じなかったけどな、と思いながら尋ねる。


「そ。気とか云々の話じゃなくてね」


最後まで言わなかったのは、露李なら分かるだろうと思ったからだ。

──露李ちゃん、案外鋭いしね。

案の定、察したようだった。


「何というか。巫女の里と同じですね。神様は眼中に無くて、地位や権力が大事なんて」


そう口に出した途端、チクリと胸が痛む。


─『悲しい』


露李の中で違和感が広がった。


─今のは、私じゃない。


露李が眠りにつく前に響いていた、花姫の声だ。


「そんなものだよ。俺達は力の強さで選ばれた頭領だけど、人気投票はやってないからね」


「アイドルかっての」


「やだなぁ理津、冗談だよ」


畳の上に寝転がり、勝手に結の本棚を漁って読書を始めてしまった文月。

さすが同い年の幼馴染み、と言ったところか。


一瞬だけ芽を出した不安を押し殺し、違うところに意識を移す。


──大丈夫。もう私を手放したりしない。


「それにしても秀水さん、どうしちゃったんでしょうか。僕の中であの人って冷淡な感じだったんですが」


「どうなんだろうな。確かにあれは変だったな」


皆が一様に首を捻る。



< 229 / 636 >

この作品をシェア

pagetop