【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく
微妙な気持ちでむくれつつ、結は文机の前に座る。
幻想的な世界の中で物騒な話をするのは躊躇われたが、自ら口火を切った。
「秀水さんのはともかく。やっぱりこの家は変わんねーな」
やな空気がムンムンする、と頬杖をつく。
「やな空気、ですか?」
特に感じなかったけどな、と思いながら尋ねる。
「そ。気とか云々の話じゃなくてね」
最後まで言わなかったのは、露李なら分かるだろうと思ったからだ。
──露李ちゃん、案外鋭いしね。
案の定、察したようだった。
「何というか。巫女の里と同じですね。神様は眼中に無くて、地位や権力が大事なんて」
そう口に出した途端、チクリと胸が痛む。
─『悲しい』
露李の中で違和感が広がった。
─今のは、私じゃない。
露李が眠りにつく前に響いていた、花姫の声だ。
「そんなものだよ。俺達は力の強さで選ばれた頭領だけど、人気投票はやってないからね」
「アイドルかっての」
「やだなぁ理津、冗談だよ」
畳の上に寝転がり、勝手に結の本棚を漁って読書を始めてしまった文月。
さすが同い年の幼馴染み、と言ったところか。
一瞬だけ芽を出した不安を押し殺し、違うところに意識を移す。
──大丈夫。もう私を手放したりしない。
「それにしても秀水さん、どうしちゃったんでしょうか。僕の中であの人って冷淡な感じだったんですが」
「どうなんだろうな。確かにあれは変だったな」
皆が一様に首を捻る。