【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく
─小動物みたいだな。
まだ何かを考えている露李を見、疾風は口元を弛ませる。
だが、その小動物が尋ねてきた話題は穏やかでない。
身近すぎる死は、現実離れしている。
手に持った漫画に視線を落とした。
今、これ何の話だ?
そう思ってから、自分が漫画など読んでいなかったことに気がついた。
いや、読んではいたのだが全く内容が入ってきていない。
いつも守護家─自分の家でも─にいると、気が滅入る。
他人の家同然によそよそしい家。
物心ついたときには、兄しかいなかった。
兄だけが味方だった。
自分の父親は、二十年前、封印後の花霞の邪気に惹かれてやってきた魔物と戦って命を落としたらしい。
母親は悲しみに暮れ、自害したという。
まるで安いドラマだな、とどこかで思う自分がいつもいた。
だが、今なら分かる。
取り残される者の気持ちが痛いほど。
ドラマが安っぽく思えるのは、それを経験していないから。
ずいぶん、兄と会っていなかったが──。
「あー、腹減ったー!!」
考えが結の叫び声にかき消され、我に返る。
「何ですか先輩、他の誰かが言うならまだしも、先輩の家でしょ。何とかして下さい」
「台所行くと殺されんだよ!」
「あー、詩衣さんの城だもんね」
全くもって興味が無さそうな文月。
「静ー連絡!連絡まだか!」
ちょっと待ってくださいね、と静は目を閉じる。
「氷紀、お腹減ったんじゃない?生身だし」
「ああ、そういえば。でも大丈夫だよ」
露李の問いに満面の笑みで答えた。
「露李の横にいたらお腹一杯だからね」
「よく分かんないけど、ありがとう」
そう答えたとき、静が目を開けた。
「部屋の準備ができたそうですよ」