【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく
庭に面した部屋。
そこにいたのは──。
何かを無心に喰らう、獣。
どす黒い紫の気に覆われ、辛うじて人の面影が残る身体までもがほとんど見えない。
露李が一歩進み、柔らかく笑う。
なぜ、その場で笑えたのか、露李自身も分からなかった。
ただ心底馬鹿馬鹿しいということだけ。
「やはり、貴方でしたか」
【お前は…】
紫が蠢き、地を這うような声が空気を揺らした。
話すことも出来なくなったか。
気を使って意志疎通をするのは知恩家も同じだが、これは格が違う。
静たちのように気を相手に送るのではなく、この獣のように気で空気を揺らして音を作ることしか出来ないのは、下級に成り下がった証拠だ。
「秀水さん。どうしてそうなったのです?皆をどこへやりました?」
人影は、背丈からおそらく秀水だった。
加えて、紫だということ。
露李の姿に反応したということ。
【分からない…】
「適当なことを抜かすな。結を、文月を─理津を、静を…どこへやった」
厳しく言及する疾風だが、秀水は別段はぐらかした訳ではないようだった。
「どこへやったのです?」
もう一度、尋ねる。
この問いで気づいて欲しい。
もう自分に猶予がないことに。
戦うしかないということに。
「このっ…」
疾風の拳に赤い炎が灯った。
「待って、疾風。─こんな気ごと消せる結界を、この屋敷内で貴方が造れる訳がないでしょう、秀水さん」
秀水はグルグルと唸り、口元に残った骨をまたバリバリと咀嚼した。