【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく

背後に回った水無月が突き刺したのだ。


「やはり、これくらいでは倒れぬか…」


彼の言う通り、獣は動きが少し鈍くなった程度だ。

容赦なく邪気を飛ばしてくる。

つまらなさそうに呟きながら、水無月は黙々と両手に持った凶器を獣にぶつけ続ける。


「この元ヒトが、お前の中でどのような存在だったかは知らないが。そのために露李の危険度が上がるなら容赦なく殺す」


「っ、分かってる」


疾風は一瞬だけ強く目を瞑り、獣に突っ込んだ。


敵は敵、攻撃してくるものに容赦はするな。


そう念じてきたはずだったが、いざよく知った者が敵になれば、躊躇してしまう。


秀水のように下級になってしまったならば、すぐに“殺せてしまう”から。


下級の妖怪もどきと、風花姫に仕える頭領とでは力の種類から変わってくる。

致命傷を与えれば、普通なら生きられるはずの程度でも、自身の穢れに蝕まれてしまうのだ。


「はっ!」


露李が獣の腹に傷を入れた。

そこに疾風が圧をぶつける。


─惨い。


「うわ、いった」


かく言う露李が図ったのだが。


連携プレイは見事だが、何せ痛そうだった。


「露李が痛がってどうするの…」


呆れながらも動く水無月。


速い。


「朱雀」


水無月の呼び声にコクリと頷き、背後へ回るため大きく跳んだ。


「止めだ、秀水さん──」


全ての力を右手に。

そして──打つ。


【うああっ…】


地を轟かせるような最期の呻き声。

流れ出る紫の光。

本当なら血飛沫でなければなかったはずのそれを間近に見た。


「ああ─」


どうして、と。


心の中で問うた。

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