【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく
呟いたはずの言葉は呻き声に変わった。
「露李っ、早く朱雀から離れろ!」
「やだ!」
じわじわと疾風の赤い気が空中に霧散していく。
こうやって─邪気に染まっていくのか。
露李は頭の片隅で自分が思ったことに戦慄した。
「面白い、なかなかに筋があるようだな」
「何の筋よ!疾風!気を確かに!」
呻くだけの疾風をどうしたら良いか分からず、有明を睨みつける。
一方、その疾風は、朦朧とする意識をやっとのことで保っていた。
ぼやけ、暗くなってくる視界を、名前を呼ばれる度に無理矢理開ける。
地面に手をつき、少し動いただけで頭に激痛が走る。
意識が飛びそうになる痛みが、限界に達すると意識を保つ為の材料になる。
─露李も、こんな感じだったのか?
大きく息を吐きながら思った。
来たばかりの頃、未琴に風花姫の記憶を植え付けられたときのことだ。
畳に倒れ、苦しみ喘ぎ。
痛みに伴って得るものが全く違ったとしても。
立っていられない痛みというのが、どれほどのものか。
今までに苦痛は味わってきたが、桁違いだ。
「有明様、もう止めて!!」
「止められぬなぁ」