【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく

ぐらりと身体が揺れる。

随分と消耗していたのだろう、そのままへたりと地面に座り込んだ。

固い石の転がる音。

そこに飛び散った、生温かい血の香り。


──手に残る、命の消える感覚。


考えただけで、気が遠くなりそうだ。

やはり、耐えられるものでもなかった。


「露李」


水無月が呼びかけると、彼女がゆっくりとこちらを向く。

目が合い、ずきりと胸が痛んだ。


──また、あの目を。


人形のような、真っ暗な空洞。

その目を細め、歪な笑みを浮かべた。


「…っ露李!」


堪らなくなり叫ぶと露李はハッとしたように目を見開く。


「氷紀、兄様」


掠れた声で呟いた。


──知ってるんだよ、俺は。

君が酷く傷ついたとき、そんな目になることを。

自分が壊れないように、小さな頃から心を無にして生きてきたことを。


「大丈夫だよ、露李」


その肩を、抱く。痛いくらいに抱き締めた。


「誰もお前のことを、見放したりしないから」


置いて行かれないように、嫌われないように。

この子が自分を殺してきたことを、俺は知ってる。

その目は─露李の怯えなのだと、俺は知ってるから。


腕の中にいる露李の身体が小刻みに震えているのが伝わってくる。


「大丈夫、大丈夫だ」


どうか、壊れないで欲しい。

俺にとって君がいない世界なんて─ガラクタ同然なんだから。

震えが収まる。腕を外し、水無月は露李と目を合わせた。


「ありがとう」


「いいえ?」


ふわりと笑う彼女がどうしようもなく、愛しい─。


そして、その頃。


「なー何だよあの二人だけの世界って感じは!」


完全に蚊帳の外状態の結がむすっと膨れる。


「…仕方がないだろう、すさまじい兄妹愛なのは知ってたんだし」


「疾風は甘いね。俺はそれだけじゃないと思うんだけど。少なくとも片方は」


苦笑いで眺める文月。


「片方!?片方ってどっちだ!?」


「おめーは鈍いんだよチビ!」


「あー!?何だよ理津!やんのか!」


「もう二人ともやめて下さい!やりませんからどっちも!」


「煩いぞ、俺と露李の世界を邪魔するな」


「自覚あったのかよ!」


いつものように皆がいる。

態度が一変した水無月に笑いが込み上げ、吹き出してしまう露李だった。

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