【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく

「まぁだから、こいつに嫌われるとか馬鹿な心配してるんならやめとけ。無駄だ」


ぶっきらぼうに言ってのけると、すたすたと歩いて行こうとする。

さすがに美喜をそのままで置いて行く訳にもいかず、露李はあたふたした挙げ句、戦いの最中に脱げてしまっていた羽織をかけた。


「疾風!」


「どうした」


追いすがる露李に速度を合わせ、肩越しに振り返る。


「ありがとう!」


「…何か企んでるのか?」


「…ちょっと」


疾風の中の私ってどんななんだ。

もしかするととんでもない悪女なんじゃないだろうか。


「そんな悪巧みするなら片付け手伝え。先輩たちもやってるだろうし、秋雨たちはどうか分からないが」


「何か、結先輩と氷紀が手伝わせてそう」


ものすごく有り得そうだ、と想像してみる。

隣の疾風も同じことを思い浮かべたのか、顔を見合せ、吹き出した。


「───露李」


笑いが収まってから、疾風がごく自然に呼び掛ける。


「何?」


「ありがとうな。──お前のおかげで俺達は望まない姿にならずに済んだ」


「…何か企んでるなら、やめてよね」



一瞬、涙がこぼれそうになって背を向ける。

疾風の前を歩きながら露李は空を仰いだ。


救われたのは自分だ、と瞼を閉じた。


< 303 / 636 >

この作品をシェア

pagetop