【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく
それから間も無く、少し開けた場所にたどり着いた。
星月夜、宵菊、睡蓮、秋雨が小さな井戸を取り囲んで立っている。
「待たせたかなぁ」
全く悪いと思っていなさそうな口調の水無月だが、もう慣れているのか四人は何も言わない。
むしろ申し訳なさそうに佇んでいる。
「皆さん…」
困ったように露李が呟くと、彼らは一斉に地面に跪いた。
落ち葉がカシャリという音と共に舞った。
驚いて思わず後ずさる。
「風花姫様」
「何してっ…」
やはり苦手だった。
親しくなったはずの人たちに、敬われるのは。
守護者たちとはお互いの信頼があるし、あくまで守護者と風花姫の関係は大切なものなのだということを理解していた。
彼らが露李を“風花姫”としてだけではなく、“神影 露李”という一人の人間として接してくれることは分かっていたからだ。
だが、まだ消えない。
巫女の里で感じた感覚が消えないのだ。
憎悪に塗れた視線や、その視線を向けられたまま上辺だけの敬意の言葉を投げかけられる、あの感覚がいつまでも付きまとう。
誰かを心から信用したことなんてこれまで一度も無かった。
信じたいと思っても、どこかで疑う自分がいた。
次期風花姫で、直系の娘で、力のないお嬢様だなんて、なんて白々しい──。
「飲まれちゃダメだよ、露李。魔が集まって来ている」
はっとして水無月を見上げる。
注意を促してくれた水無月自身も辛そうな顔をしていた。
「氷紀こそ、大丈夫なの!?」
「まあね。大きな術が集中して使われた上に、一瞬でほとんどが解かれたんだ。そりゃ集まってくるよね…」
心底嫌そうに吐き捨てる。
一方、秋雨を除いて、跪いた彼等はあまり感じていないようだった。
不思議そうな顔で露李たちを見ている。
秋雨は苦しそうにしつつ、水無月を心配しているようだ。
「…大丈夫か、水無月」
「うるさいなぁ、馬鹿にしないでくれる?こんなことでへたばってちゃ露李を守れないじゃん。秋雨くんに心配されるとか心外。やだ」
「…そうか」
一種の拒否反応のように矢継ぎ早に言い返されて気圧されたのか、口を閉ざす秋雨。
「それで。露李は仲良くなった奴にそういう態度とられるの嫌いだから手早くしてよ」
急かす水無月の言葉に一同が頷く。
そして、改まって露李の瞳を見つめた。
「この度は大変な失礼を働き、申し訳ありませんでした。我が主、有明を有り難うございました」
申し訳ありませんでした、有り難うございましたと皆が秋雨に続く。
露李はグッと拳を握り締めた。