【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく
「あ、のさぁ」
沈黙を破ったのは睡蓮。
おずおずと手を上げ、視線をさ迷わせながら提案した。
「俺が一時的に姫様たちの記憶をどうにかするから、その間に他の奴等が魔物?を蹴散らすってのはどうかってことなんだけどよ…」
「あー君、幻術だったよね。でも俺達の記憶いじるの、相当体力使うけど?何しろ格が違うんだし」
「……睡蓮の幻術はなかなかだ。少しの間なら十分すぎる力がある」
「知ってるけど。それなりに一緒に居たんだしさぁ。けど三人は厳しいと思う」
水無月はあくまで否定的だ。
理屈を述べているだけではあるが、頑なすぎる。
いつもの水無月ではないような気がして露李は首を傾げた。
こう、不機嫌そうな割に怒っている訳ではなさそうな。
「私は良いと思うんだけど。…何かすごいふてくされた顔してるね」
「してないよ。してないに決まってるじゃん。全然してない」
「…怪しいぞ、水無月」
「うっるさいなぁ。何?露李の記憶に侵入して良いのは俺だけだとか思ってたのは俺だけど、何?ムカついてなんかないけど、何?」
そこにいる全員が閉口した。
秋雨は呆れたように横を向き、睡蓮はポカンと口を開けている。
「…蓋を開ければ露李姫の事ばかりなのは、変わりないな」
「こ、この期に及んでそこで足止めはやめようよ氷紀…」
露李がそう言うと水無月はむすっと口を引き結んだ。
「露李がそう言うなら良い。…でも」
勢い良く睡蓮に向き直り、鋭い眼光を光らせる。
睡蓮が、ひっ、と息を飲んだ。
「要らないことしやがったらぶっ殺すぞ」
「お、おう」
ドスの利いた声に、思わず怯える睡蓮だった。