【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく
「んじゃあ行くぞ」
「お願いしますっ」
露李の返事を合図に、睡蓮が三人に手をかざした。
何が起こるのかまるで予測不能だ。
目を瞑り、睡蓮の術がかかるのを待つ。
刹那、全身にとろりとした温かいものが流れていく感覚。
『化け物───!』
赤紫が頭の中を埋めていく。
魔物が見せる辛い記憶に、幸せな記憶を引き出して紛れさせているらしい。
『露李ー、何ボサッとしてんだー!行くぞー!』
『こっちに来ないで!!気持ち悪い!!』
『露李ちゃん、今日も元気だねぇ』
『貴女の母親は──』
『露李、帰るぞ』
『早くしねぇと襲うぞ露李』
『あんたなんて死──』
『露李先輩!おはようございます!』
『つーゆり。行こっか』
意識が一気にクリアになった。
露李の大切な記憶が溢れ出し、苦渋の表情が自然と消える。
「長くは持たねえっ、今のうちだ!」
「姫様っ、魔物が一時退避しました!」
「嬢ちゃん、大丈夫か!?」
睡蓮、宵菊、星月夜の声が聞こえた。
そして、気を集中させる。
己の中にある光を呼び覚ます。
真っ暗な闇の中に、青色の円が見えた。
「───そこです。この井戸を軸にして、ぐるりと円が書いてあります。…いえ」
それだけではない。
円の上──その上空に、天体の図のような、正に空間を描くような青い膜が見えた。
「この辺一体に、魂を閉じ込める結界が張ってあります。きっと身体は…この井戸の下。…異空間が造られています!」
そう告げると、二人とも一様に顔をしかめる。
「何それっ、面倒くさっ。秋雨君もババアのこと少し位止めてよね!」
「…すまない。しかし何故、扇莉はこのようなことを…」
「知らないよ!もう早く解くよこんなめんどくさい呪い!」
水無月が井戸に手をかざす。
秋雨と露李もそれに続き、三人とも気を集中させた。
バチバチと火花が散る。
ピリリとした感覚が結界を破るときのものなのだと改めて知った。
侵入者だと言わんばかりに結界は抵抗してくる。
水無月と秋雨からは銀の気が立ち昇り、露李からは金銀両方の光がキラキラと辺りを満たした。
青い光に意識を向ける。
気が遠くなりそうだった。