【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく
「ゆーいーー!!!」
「静ーー!!」
「文月ぃい!!出てこい馬鹿息子が!」
それぞれ当主が叫びながら走ってくる。
─やっぱり、いくら守護家なんて特殊な家庭でも大切なんだな。
羨ましさ半分、安堵半分。
「ちょ、母さん転ぶから!砂利だからなー!?」
「母様っ、着物の裾気をつけてください!」
「父上。ここです」
三人も少し呆れたように、でも嬉しそうに駆け寄る。
しかし、露李はもうそちらを見ていなかった。
「──理津」
「行きなよ、露李」
水無月の声を聞くか聞かないかで走りだし、その場を静かに去る理津の背中を追う。
歩幅が違い過ぎてなかなか追いつけない。
そのまま辛うじて無事な大きな松の木の幹の陰で理津が止まる。
追いついても何も言わず、横顔は険しいままだ。
「理津っ」
少し声を大きくすると、理津はびくっと露李の顔を見る。
「いたのかお前!?」
「いたのよ」
すまして答える露李に、無理に笑おうとした。
しかしそれは笑顔の体を成していない。
その歪な笑顔を真っ直ぐ見つめる。
「何だよ」
「別に笑わなくて良い」
予想外の言葉に詰まり、固まる。
真っ直ぐな、視線。
何故だか目頭が熱くなって、理津は慌てて目を背けた。
「…お前も、別に罪悪感とか感じる必要ねぇからな」
これだけは言っておきたかった。
露李のせいではないという事だけは。
だが、心のどこかに穴が開いた気がするのも確かだった。
「あいつが一番、俺に良くしてくれたからな。まだ─その辺にいるんじゃねぇかって変な気がしてんだ」
「…うん」
「でも、お前からも疾風からも水無月からも聞いたけど。やっぱりそうなんだよな」
分かってんだ、と理津は頷く。
頬に透明な雫が流れたことには気がつかないふりをした。
「あんなクソみたいなインチキ紳士でも、家に帰ったらもう俺の相手してくれる奴いねぇんだよな」
変な感じだ。
そう呟く。