【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく
「別にそんなに悲しくねぇよ。お前が思ってるほどな」
黙ったままの露李の視線に居心地が悪くなる。
「つーか、俺にはお前らいるし。あいつが居ようが居まいが、さして今までと変わらねぇだろうよ」
そっと口角を上げて─それがあまりにも自然だったことに自分でも驚いた。
気持ちを言葉にしてみたら、自分の中で何かが腑に落ちた。
仕方の無いことだと諦めに近い感情。
きっと、これは乗り越えたのとは違うのだろう。
だが、それでも良い。
理津は目の前にいる姫君に笑って欲しいと願った。
いつになく静かな露李に違和感を感じるのは、きっと、自分だけではないだろう。
もしこの場に他の者がいれば、どうにかしてこの少女を笑顔にしようと思うはずだから。
何か声をかけなければと迷っていると、不意に露李の白い手が動いた。
そのまま理津の頭に乗る。
灰色がかった茶色の髪を、その手がゆっくりと撫でた。
「──ありがとう」
ただ、ただその一言が。
こんなにも心を揺さぶるものだとは思わなかった。
理津は紫の瞳を揺らし、露李の目を見つめる。
涙はもう出ない。辛くもない。
ただ底知れない喪失感があるだけで。
露李はそれきり何も言わず、時折少し困った顔をしながら撫で続けていた。