【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく

ああでも、と思い止まる。

ここで崩してはいけない。


「お黙りなさい!!」


響いたのは、露李の声。

一同、また静まり返る。

今初めて露李の存在に気づいたかのような顔で硬直する、弱者たち。


─どうして叫ばれないと理解できない。



人気投票で頭領に選ばれた訳じゃない、と結たちは言っていた。

力の強さだ、と。

でもそれだけじゃない、と露李は思う。

彼等が選ばれたのは、元々の力の強さだけが理由じゃない。

初めは素質で選ばれただろう、だが選ばれた後も実力が揺らがないのは彼等自身の問題だ。

元々の力が強くても、自分で鍛えなければせっかくの身体能力も落ちる。

術式も覚えられないし、覚悟だって必要だ。

都合の良いときだけ従って、何か痛いところを見つければ容赦なくつつく。

いざとなれば必ず日和るだろうと思わせるような輩に、命がけの覚悟なんて出来るわけがないのだ。

それも他人を守るために死ぬ覚悟など。


「それ以上の勝手な発言は私が許しません。それより、聞かせていただけるかしら」


聞き捨てならない声が聞こえた方へゆっくりと笑いかける。

守護者たちがヒッと息を飲むのが聞こえたが、気にしない。


「どういう了見で今、自分の頭領をこき下ろしたのか。聞かせて頂ける?」


あからさまに青ざめた者がいた。

それは今、最大に命取りだ。


「ああ、貴方ですね。さっきの言葉を発したのは」


背の高い、貧弱な体つきの男子だ。

年の頃は同じくらいか。

金髪に薄い緑の目、ということは風雅家だ。 


「今なら発言を許可します。どうぞ、“私たち”が何をしていたのか、お聞きになりたかったのでしょう?」


「いえ、姫様僕は」


明らかに戦いている彼を追い詰める。

いっそその顔が心地良い。


「あら、私は聞きたいわ」


有無を言わせない口調に、彼が唇を震わせた。


「僕はっ…もっと、何か襲撃を避ける策があったのでは、と…それを考えるのが守護者に就いた人の役目ですしっ」


「それで?」


「役目を全うしなければそんなの、」


ぴくりと露李の眉が跳ね上がったのを見てまた怯える。

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