【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく
*********************


「お帰りなさいませ!!」


露李一行が急いで帰り、神影家の庭に降り立つと、海松が嬉しそうに待ち構えていた。

屋敷内からあたふたと出て来た姿は遠くからでも見えていたので、美喜と水無月を除いた全員が嬉しげに口元を弛めていた。


「ただいま!海松ちゃん」


海松は、にっこり笑ってそう言った露李をまじまじと眺めてから目を潤ませてただ頷く。

そんなに日は経ってはいないが思うところがあったのか、着物の袖でごしごしと目元を拭っている。


「ご無事で何よりです…本当に良かったですわ、露李様」


「ありがとう。海松ちゃんも元気?」


二人でにこにこと笑い合うのを不服そうに眺めるのは守護者たち。

お互いに同年代で同性だからか、海松と露李は守護者たちとは違った雰囲気で殊更に仲が良い。

蚊帳の外状態なのが何だか悔しい。


「何だよー海松、俺らにも言うことあんだろ何か」


むすっとした結が唇を尖らせた。

何度も思うのだが、露李としてはそれは可愛いだけだ。


「お帰りなさいませ。結さん、文月さん、疾風さん、理津さん、静さん」


ついでのように言われて嬉しい者などいないだろうが、文句をつける箇所が無い。

より膨れた結はプイッと顔を背け、文月たちを苦笑させた。


「…あら?その方は?」


露李の手を握りながら、海松が静の後ろを見た。

露李が着ていた着物の羽織を被せた美喜を、静が浮かせて運んでいたのだった。


「…美喜っていうの。鮎原…?いや、春月の方が良いのかな」


「春月様ですか。どちらからいらっしゃったのです?守護家ではお見受けしたことは無いように思うのですが…」


「私の友達!色々事情があって、連れて来たの。しばらくしたらお家の方がいらっしゃるけれど」


ここで言う美喜の家族とは勿論、秋雨たちのことである。

海松は納得したようなしないような微妙な表情を浮かべ、ぎゅっと露李の手を握り直す。


「露李様のお友達…。それでは、おもてなししなくてはいけませんね。─あ!申し訳ありません、早く中へ。ここは寒いですから」


海松はまた柔らかく笑って皆を迎え入れた。


< 324 / 636 >

この作品をシェア

pagetop