【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく

露李がまだ来ないので、結たちはいつもの部屋で畳の上にごろりと寝転がっていた。

皆にとって、一族で住まうそれぞれの家よりも神影家の方が落ち着ける場所になっていた。

それは露李や仲間がいるからと言うのもあるが、やはり始終気を張って頭領らしさを見せなくてはいけない実家が、極端に居心地が悪いという理由もある。


「疲れたなー」


結がほとんど欠伸をしながら言うと、周囲から賛同の声が上がる。


「色々ありすぎだ…冬眠していたい気分だ」


「もうこれ以上は向き合えねぇ。うぜぇ」


畳を力なく叩きながらいつものごとく悪態をつく理津。


「それは何に対してなの理津…」


文月も呆れたようにつっこんだ。

それぞれがそれぞれに言っているが、一人発言していない静は寝かけている。


「うおーいお前らまだ寝るなよ。露李が来てからだぞー」


結自身も激しい疲労を感じているが、翡翠色の目はしっかりと開いていた。

顔だけにその疲れが現れて、いつもにかっと笑っている口許さえも今は口角が下がっている。


今でこそ疲れてっけど、何だろうなあの時のアレは。


もう言葉で説明できるほどの語彙力は無い、しかし思い返すほどの元気はあった。

驚くほどの力がみなぎり、姿が変わった。


「ねぇ結。お前見てたんだよね、俺達のアレ」


文月も不思議に思うのは同様で、天井をとろんとした目で見つめながら結に尋ねる。


「おー、見てたぞー」


「そう。何でああなったか経緯を教えてよ」


「お前ほんと鬼畜かよ、俺に今説明させんのかー?」


「ああごめん。お前そういえば馬鹿だったね」


「そういう意味じゃねーっつの!」


唇を尖らせて反論する結に、疾風が苦笑いする。


「結先輩、煽られてむきになってたら思うツボっすよ」


「ああ分かってんだよ、要は勝てば良いんだろ!」


「いや違ぇだろ」


理津がむくりと起き上がって結の頭をはたいた。

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