【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく
「なっ…にすんだよ!理津のアホ!」
「アホはてめぇだろ。つかよくそんな元気あんな」
目をショボショボさせ、理津はまた寝転がる。
「アホでも馬鹿でも良いけどさぁ。どうなってたか教えてよ。分かんないんだってば俺ら」
「お前が言い出したんだろうがよー。…けど、俺もそれは分かんねーわ」
結は面倒そうに肘をついた。
考えることは多いし眠いし疲れたし、何だか座禅でも組んで無に帰りたい気分だった。
「───俺たちは」
文月が口を開く。
静けさが部屋を包み、外から鳥の声が聞こえてくる。
雀だろうか、心細そうに鳴くその声が妙に耳に響いた。
「ずっと闇だった…真っ暗で、ただただ光が欲しかった。自分でも抑えきれないくらいに、光を欲してた。赤黒いみたいな闇の中で、ズブズブ沼に嵌まっていくみたいな感じだった」
今でもぞっとするよ、あれは、と文月は自分の肩を抱いた。
よほど気味の悪い感覚だったのだろう、結以外の他の面々も顔をしかめる。
「でも聞こえてたんだ。露李ちゃんが俺たちを呼ぶ声だよ。泣いてた───だから、抜け出そうと本気で足掻いた。でも身体が勝手に動いて、気持ち悪かった。目は見えないのにただ何かを捕まえようと手を伸ばして。露李ちゃんの声が光みたいに差し込んでね」
宙に手を伸ばす。
その光を抱き締めたくて、抱き締めて、露李の涙なんか一切見たくなかった。
─露李ちゃんを、泣かせたくなんかないのに。
泣かせたのはきっと俺たちだ。
「でも、途中からのことは意識が途切れてるんだよねぇ。戻ったときには、露李ちゃんが札の術式を完成させてたし。しかも力が湧いて、身体に家紋が刻まれてて、目の前の敵─たぶん露李ちゃんを泣かせた奴を、倒そうとしてた」
文月の手が空を掴む。
一際激しく小鳥が鳴き、突如として沈黙した。
「全く、訳が分からないよ」
「…お前らは、そんな感じだったのか」
「そ。結は?」
「俺は───お前らが、低級魔になるのを見た」
結を除いた四人がはっと息を飲む。