【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく
 

 二人が落ち着くと、露李はスッと襖の外に気配を感じた。

五色と、自分と似た銀色。


すぐに水無月が守護者たちを呼んできてくれたのだと理解する。

美喜の目が覚めたときに秋雨たちが出ていくと言ったので、色々と決めなければならない。


「美喜。今ね、秋雨さんたちに神影の離れに住んでもらってるの」


「え!?どうして──ってあたしもか」


驚いたように目を見開く美喜。

露李は困り笑顔を浮かべて美喜の身体を支えながら答えた。


「陰の気ももう感じないし、それに…有明様をあんなに信じるのに理由が無いはずがない。あと私、少しの間だったけど……優しい有明様が好きだったから」


華奢な見た目のわりに豪快に笑う所も、変なギャグを言う所も、現代の言葉に慣れない所も。

少しの間でも、それが露李の見た有明の姿だ。

最期の瞬間とその姿は重なっていた。

あれが本当の有明なのだと信じている。


一つ一つの言葉に感情が乗っていて、重い。

美喜は露李の声を聞きながら目を閉じた。


普通の高校生では有り得ないほどの重荷を背負っている露李だ。

発する言葉の全てが、彼女の心を表している。


「───全部が嘘じゃないわよ」


「え?」


「あたしは、あんたのことが大好きだもの」


言わんとすることが飲み込めずに首を傾げる。

露李の不思議顔に美喜はくすりと笑った。


「あたしは有明様の魂の半分。陰陽関係なく、そこだけは変わらないわ。本質的には同じものは、同じものに惹かれる。──だから有明様は、焦ったの」


またも露李は眉を下げた。

分かったような分からないような。


「有明様は、あんたが手に入れば良かった。酷い話だけど、守護家ごと潰す気は無かったわ。それでも、あんたを手に入れた上で守護家を潰して花霞を奪おうとしたあの人は、怖かったのよ」


「怖い?」


「そう。自分を陰と陽にまで分けて企てた計画を憎しみの対象でしかなかった露李に壊されるのが。虐げられて生きてきた露李が馬鹿みたいに優しいから、捨てたはずの心が生まれたことに気づいたのよ」


そこまで語ってから美喜は呆れたように溜め息をついた。


「あの人は強いけれど臆病な人よ。もう戻れないのに、戻りたいと思ってしまった。久しぶりに心の底から笑って、自分のしてきたことが恐ろしくなったんでしょう。迷惑な話だけれど。だから有明様は、守護家まで潰すことで陰の自分を保とうとしたのよ」


「でも、そんなのって」


「理由になんてならないわ。でもね露李。あんたが優しすぎるから、あの人は恨んで欲しかったのよ。そうしたら恨まれるような自分でいられると思ったのよ」


霧氷のためだけに生きる自分に。



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