【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく
白い光が部屋を差し込んでいるのが分かる。
瞼一枚分の闇の中で露李は徐々に意識を覚醒させた。
「……私」
朝だというのは雰囲気で分かった。
どれくらい眠っていたのだろう。
とりあえず服を着ようと立ち上がる。
眠る前のことが思い出せない。
きちんと寝間着は着ているが、それを自分で着た覚えはない。
それなら誰かが着せてくれたのだろうか。
それが出来るのは海松しかいないが、そうはいっても人に着替えさせてもらう事態がそもそも異常だ。
袴を取り出したが、どれくらい眠っていたかも分からずに起きて巫女装束で歩き回るのはおかしいかと思い直して着物を取り出す。
小花の模様が気に入っているそれを手早く着て、文机を見る。
未琴から貰った鏡が乗っていた。
以前これを見たときは嫌な想いしかした覚えがないのだが、恐る恐る手に取ってみる。
指が触れても何が変わることもなく、次は鏡そのものを覗きこむ。
「あれ…大丈夫だ」
思念が頭に流れることもなく、ただの鏡だ。
確認のために目を閉じて意識を集中して、鏡をくまなく点検する。
何の気も感じられない。
未琴の籠めた術が解けて、この鏡は使命を終えたということだろうか。
ほっと安心してその鏡で身なりを整え、長い髪をいつものハーフアップに結って、そのまま懐に入れる。
いつまでも捨てられないのは、露李がやはり未琴を母だと思っていたから。
その気持ちは今でも消えていない。
自分でも分かっていた。
バタバタという足音が二人ぶん、露李の部屋の前で止まった。