【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく

びゅんびゅんと風を切った末にたどり着いたのは、屋敷のいつもの居間だった。


「もう、遅いですわ。朱音は待ちくたびれましたの」


朱音と名乗った女性がそこに座っていた。


いつもいるはずの守護者たちの姿が見えず、彼女だけが異質に見えた。

しかし前のようにひれ伏したくなるような迫力はない。


容貌とは裏腹に子供っぽい顔をする人だな、と暢気に思う。


「露李姫でしたわね。始めましてではありませんけれど、挨拶は必須ですわね。お座りになって」


言われるがままに腰を下ろし、露李は不思議な思いで朱音を見つめた。


「初めまして、露李姫。私、秋篠 朱音と申しますの。この間は私のお人形がお世話になりましたわ」


「い、委員長のことですか…?人形って何ですか、確かに人ではないと思いましたけど」


この場で普通に話せていることも不思議で、露李は内心で首を傾げた。


「そうですわよ。私が造ったのです…まあ、自我を持ってしまったのが失敗でしたけれど。それはそうと露李姫、貴女今日はお加減宜しくて?」


「はあ…」


「この間は気を隠すこともせずに現れたので、皆さん気絶してしまいましたの。申し訳ありませんわ」


「皆さん?」


「ええ、貴女も貴女の守護者の方々も。ああそれと、私の子孫もいらしたわね」


「子孫?」


「まだ寝ぼけていらっしゃるのかしら。私、秋篠と名乗りましたけれど」 


「もしかして、氷紀のご先祖様!?」


「あの方は氷紀というのですね。貴女もあの子も数奇な運命を辿っていますわね……それに、私を年増みたいに言うのはやめてくださる?」


むっとした表情で朱音がこちらを睨み、赤い瞳が細められる。


ごめんなさいと即座に謝ってしまう。






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