【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく

群れの向こうの朱音を見る。

どんな表情をしているのか、ここからでは見えない。


「露李ー!どうしたーー!」


結の叫びにはっと振り向き、また敵を薙ぐ。


「先輩!風!今から跳びますからっ、風を!」


それだけ言って、脚に力を入れて跳躍する。

美しく澄んだ月が少し近くなり、足元に翡翠の気を感じた。


「あら、早いご到着ですわね」


朱音が身構え、露李が雹雷鬼を振りかざす。

金属が当たる音がして、刃と朱音の鉄扇の力が拮抗する。


「朱音様!!貴女っ……本当はこんなことしたいんじゃないないんでしょう!?」


「何を仰るのかしら。朱音は──」


ぐ、と踏み込まれた朱音の表情が歪む。


「なら、本気で来たらどうですか!?本当に全てを無くしたいなら、こんな弱くないでしょう!?」


「私は弱くなんてありませんわ!」


「小娘に負けるような貴女じゃないでしょう!?本当は何が狙いなんですか!!」


「……え、偉そうなことを仰らないで欲しいですの!」


銀の風が吹き荒れ、露李の身体を吹き飛ばした。

敷き詰められた石も同時に飛ばされ、露李の頬に傷を作る。

痛みに襲われながら、ゆっくりと顔を上げる。

しかし、その額に刃が突きつけられた。


「薙刀……」


武器精製で出した朱音の武器だった。

手の中の雹雷鬼をぎゅっと握り締める。


「ここで決着ですわ。貴女は、“神”として──人間を滅するのです」


真っ赤な瞳が露李を見下ろした。


「嫌、と言ったら?」


「ふ、何を。まだ痛みが足りないのかしら」


刃先が露李の額を滑り、血がぽたりと落ちた。


「露李ッ!!」


水無月の声が悲痛に響く。


「このっ……」


「動かないで下さい!」


鋭く結を制し、露李は朱音をじっと見た。

震える切っ先は、朱音の迷いだ。


「私の自我を奪えば良いでしょう。どうして斬りつけようとなさるんですか」


「……っ、やかましいですわ!」


ざくり、と左腕が切り裂かれたのが分かった。

顔をしかめる。


しかし、当の朱音も青ざめた顔でその赤が流れる様を見ていた。


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