【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく
「次は、殺しますわよ。貴女の力さえあれば良いのですから」
「そうですか」
「お気楽ですわね。生かしておこうと思っていましたが……それももう無駄な気遣いでしたわ。もう貴女は邪魔ですの」
また首に突きつけられた刃が、震えている。
小刻みな動きが露李の喉を少しずつ切り裂いた。
「ねえ、朱音さん」
露李はにっこりと微笑んで、一人の女に呼び掛けた。
「ごめんなさい。気がついちゃったんです」
「生意気なっ……小娘が何に気づくと言うんですの!!」
「朱音さん。本当に、私を殺そうと思ってるなら…泣かないで下さいよ」
朱音の頬に伝う雫に、露李は困ったように笑った。
「貴女が私に、罪悪感を抱いて下さってること。もう、分かっちゃいました」
「有り得ませんわ、そんなこと」
「ありがとうございます。朱音さん」
「話をっ……」
「私を、愛してくれて」
朱音が息を飲む音が聞こえた。
露李は今度は涙を止めようとはせず、話し続けた。
「もう辛い思いをしなくても大丈夫ですから。ねぇ、泣かないで下さい」
「やめて、お願いだからやめて……ねえっ、言うことを聞いて!!」
朱音が大きく振りかぶる。
逃れようと立とうとするが、相当な血が流れたせいか力が入らなかった。
目を閉じた───が、いつまでも痛みはやってこなかった。
恐る恐る瞼を押し上げる。
「…………やめろ朱音」
その腕を掴んでいたのは、少し前に送り出したはずの──秋雨だった。