【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく
「…水無月。どうした?」
眼帯の後ろから眼帯と同じような燕尾服に鉢巻きをした男が出てくる。
何で鉢巻きにしたんだ。
純粋に上がった疑問も、すぐに消えた。
「…よお、風花姫さんじゃねぇか」
鉢巻き男が鼻を動かし、鋭い眼光を光らせた。
「ちょっと手合わせ願いたい」
「やめな、星月夜」
水無月の静止を振り切り、鉢巻き男─星月夜の目が赤く輝く。
雷に撃たれたような痛みが露李の身体に走った。
痛い──痛いがしかし、
『貴女はここに居てはいけない子』
『私の方が、貴女よりも風花姫にふさわしい』
『貴女さえいなければ』
『自我を全て無くしなさい』
里での記憶が頭の中でスクリーンに映し出されるように流れた。
思い出す、両手首の痛み。
あれは──何の記憶?
「何で君、泣かないわけ」
水無月が呆然と呟く。
「痛みには、慣れています」
表情一つ変えず答えた露李に、心なしか二人とも寒気を覚えた。
ああ、もうすぐ意識を失うかもしれない。
膝が震えてきた。
「露李っ!!」
聞こえてきた声は、焦りと怒りに満ちていて。
顔を上げると、翡翠の光をまとった風雅が露李を庇うように立っていた。