【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく
「つーかお前が姫さんかー」
何故だか湿った空気を紛らすように彼が言った。
「え、あ、はい…」
正直、実感が湧かないために潔く答えられる自信がない。
「なーんか想像と違った」
露李の表情が固まった。
「っほ、放っといて下さい!」
風雅も顔から表情を消して腕の中の露李を見る。
「…そうだな。俺には関係ないな」
自嘲的に浮かべた笑み。
露李は目を見開いていた。今度は違う理由だ。
どうしてそんな顔するの。
何で貴方がそんな、そんな傷ついた──全てどうでも良いみたいな顔。
戸惑いが隠せない姫に、風雅は瞬時に戻して優しく笑う。
「そんな顔すんな。ほら、着いたぞ」
空を飛んでいたことも忘れていた。
地面に足をつけることに違和感を感じるほど気持ちが良かった。
「着いたって、」
「お前、風花姫なんだろ?」
「はい、でもどうして」
「俺はお前の守護者だ。さっきも言ったが風雅 結。結で良い」
守護者。里を出るとき聞かされた、私を─風花姫を守る者。
「神影家から参りました、神影 露李です。結先輩」
「露李か。…ま、話は中に入ってからだな」
「そうですね…」
露李はそびえ立つ屋敷を見た。
荘厳な雰囲気を醸し出している。
〈神影家〉と石造りの重々しい表札も出ていて、どことなく入りにくい。
決心を固めて敷居を跨いだ。