【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく
「露李」
奥から厳格な声が露李を呼ばわった。
「未琴、様」
瞬時に露李の声が固くなる。
露李の中で未琴は苦手な、怖いと感じられる存在になってしまっていた。
次に何を言われるのか。
顔を見ただけで足がすくむ。手が震える。
海松がすっと前に出た。
「未琴様、お体はもうよろしいのですか」
「ええ」
短い返答には二の句を次がせない響きがあった。
「露李。私の部屋に来なさい」
え、と露李が顔を強張らせる。
怖いという気持ちが全身をポンプのように駆け巡った。
「結、文月。貴方たちもです。疾風、静、理津はもう呼んでいます」
皆一緒だ──。
それだけで、安心できる。
「大丈夫だ。行くぞ」
結の囁きを合図に、露李は一歩を踏み出した。
*****
「よう」
既に部屋に座っていた三人の横に座ると、疾風が小声で挨拶した。
「お疲れ様」
それだけを返し、前を向く。
「貴方たちを呼んだのは、紛れもなく花霞のことについてです」
単刀直入に、未琴が切り出す。
「露李、貴女の覚醒がより鍵となってきました」
「はい」
露李はぎゅっと膝の上で拳を握った。
「よって、何らかの行動を起こして覚醒を促さなければなりません。分かりますね」
「未琴様」
「どうかしましたか、疾風」
未琴の視線が疾風に向けられる。
「風花姫の覚醒を急ぐということは、つまり──花霞が?」
「そうです。封印は着々と解かれていっています。恐らく、霧氷──花霞に封印された魔の魂が花姫の血の流れる風花姫の力に反応しているのでしょう」
魔。
未琴の口から何気なく発せられた単語に露李は激しい違和感を覚えた。
あの人は、そんな。
──『あの方は、そんなものじゃない』
露李の中で二つの声が重なった。
「…っ!?」
「露李?」
ハッとして顔を上げ、全員が自分に注目していることに気がついた。